日本・台湾・韓国で累計会員数700万人を突破し、国内でも年々拡大し続けるオンラインデーティング市場で国内最大級を誇るオンラインデーティングサービス「Pairs(ペアーズ)」。
運営する株式会社エウレカでは、サービスをより成長させていく施策のひとつとして、BIチームとマーケティングチームの連携を強めているという。
具体的にどういった関わり方をしており、どんな成果が出ているのか。BIチームのリーダーである鉄本氏と、マーケティングチームのリーダーを務める和田氏に詳しく話を聞いた。
左から
株式会社エウレカ Blチーム・マネージャー
鉄本環
エンジニアインターンを経て株式会社エウレカへ2013年新卒入社。
オンラインデーティングサービス「Pairs」のアルゴリズム改善や施策分析を経験し、2017年より全社横断のBIチームの立ち上げ責任者に就任。BIの評価制度を作成し、キャリアパスの開拓を進行中。業務では分析基盤の設計構築、組織・事業のKPI設計に従事。
株式会社エウレカ Pairs事業部 マーケティング・スペシャリスト
和田智子
インターネット広告代理店から化粧品メーカーのEコマースマーケティング担当を経て、株式会社エウレカへ入社。CRMやマネタイズにおけるプロダクト開発のPMを経験し、2016年より「Pairs」のマーケティングチームの責任者に就任。現在は新規ユーザー獲得およびオンラインでの認知拡大施策に従事。
M&Aがきっかけ!?マーケとBIが連携することになった理由とは
―まずは両チームがどのような関わり方をしているのかお聞かせください。
和田: 基本的には売上拡大を目的としていて、新規獲得はもちろん、既存ユーザーに対してもうまくマネタイズするためにどう施策を打っていくかを考えるときのデータ設計やユーザーセグメント設計について連携しています。
―業務の依頼はどのような流れで行われるのでしょうか。
和田: 新規獲得を例に挙げると、広告の投資判断のためにデータを見たいということで依頼することがありますね。どの経路が一番売上が伸びるのか、どんなユーザーが使ってくれているのかなど、ROIを見ながら投資判断をするためにBIチームにデータ抽出をお願いしています。
また、投資判断のスピードを上げるために、そもそものROIモデルの構築を依頼したりもします。
―それはプロジェクト形式で時間をかけて設計していくイメージでしょうか?
鉄本: 内容によるところがあります。計測ツールを新しく導入したりリプレイスしたりする場合は、評価軸を決めたり要件の定義、また精度を担保するところから始めます。長いものだと数ヶ月かけることもあるんですが、最近は各自がプロジェクトを持って、ツールを導入しやすいようにしたり、新しい経路を開きやすいように整理するようにしています。
この頃は連携を介することなく新しい経路を追加できるようになってきました。もちろんどうやってデータを取れるようにしたらいいか相談を受けて対応することもありますね。
―マーケチームだけではデータ分析まで手が回らないこともあると思うんですが、見きれないデータについてはカバーしてもらったりすることもあるんでしょうか?
和田: ありますね。代理店さんにデータを開示することで一緒に分析しながら広告の運用を進めることもあるんですが、代理店の提案をもとに、「BIチームでこういうデータを出せないか?」と相談するようなイメージでしょうか。
鉄本: 代理店は広告運用のナレッジを持っているので、指標について提案していただけるんです。それに対してBIチームはプロダクトドメインのナレッジを持っています。指標の妥当性を相談し合い、もっといい指標を見つけていくような関わり方をしています。
和田: 以前はマーケターやディレクターが自分でデータ設計して「このデータを抽出してください」とBIチームに依頼していました。BIから生のデータをもらってから、加工や分析はすべてマーケティングチームで行っていました。
マーケターも日々のオペレーションがある中でやってたので、正直いっぱいいっぱいでした。データの正確性も気になりますし、ドメインナレッジはもちろんBIの方がありますからね。プロダクトのデータの全容を知らないまま、自分が把握している上でのデータ設計とか施策を考えたりとかしていました。
―本当は生かせるアセットがあるのに生かしきれていなかった。
和田:そうですね。正確性も微妙な中でやっていました。
―うまくいき始めたのはいつ頃なんでしょうか?
鉄本: BIチームは、2年ほど前にマーケチームの中で生まれたんですよ。それまではデータの定義もバラバラで、広告経由のユーザーはどれなのかといった情報もまったく整理されていなかったんです。
だからまずはデータを定義したり、命名規則を整えたりといったところから始め、データを紐付けることで集計可能にしたのが最初ですね。それがだんだん効果を見せ始めたので、分析の範囲を広げていったというところでしょうか。
―本格的に始めるきっかけがあったのですか。
和田: ぶっちゃけると、じつはM&Aが理由なんです(笑)
鉄本: 親会社であるMatch Groupへのレポート形式が、これまでと違ったのが大きくて。レポート形式が違うとどんなに効果があると言ったところでグループ内での評価基準が異なるから、比較や判断が難しいんですよね。
また、Match Groupは既にこの市場のナレッジを持っており、やり方も計算の方式も先進的だったので。
エウレカでは当時、まだ整備が整っていなかったこともあり、Match Groupの形式を踏襲することにしました。その方が、よりスムーズにナレッジをシェアできますから。もう確立しているマーケティングの指標や効果測定のやり方を取り入れ、整理した上でレポート形式を揃えました。
連携がうまくいくのは、組織の風通しがいいから
―チーム同士の風通しがいいというお話を伺っていたんですが、エピソードなどはありますか?
和田: 代理店さんも一緒のSlackチャンネルがあって、そこで直接やり取りしていたりしますね。何かを経由しないといけない、という制約をなるべくなくしています。ツール周りは何も言わなくても見てくれていますし、勝手に最適化してくれていることもあります。
鉄本: もともとBIとマーケチームはひとつのチームだったので、何が必要か、何に困っているのかが自然にわかっているということもあり、頼まれる前に改善してしまうことがあります。データの精度が悪いのはもちろん困りますから、うまくデータを取ったりリアルタイム性を担保するために、勝手にAPIを調べて自動化してしまうこともありますね。
―依頼する側、される側みたいな構造になりがちかなと思うんですが。
鉄本:そういった一方通行な関係ではないですね。例えば「このツール、データがおかしいかも」ってBIチームから言ったりすることはあります。マーケチームから「なんかおかしいです」って言われることもありますし、それをきっかけに改めて分析してみることもありますよ。
―マーケチームが勝手に経路を追加されてたりすることもあるんですか?
和田: ガンガンしてます笑
―それはOKなんですか?
鉄本: はい、まったく問題ないです。新しい経路が発生したときには、その情報をちゃんとデータベースにいれてほしいので、アラートを飛ばすようにしていて。それが放置されてたら「入れてくださいね」って言うことはあります(笑)
和田: 勝手に追加して、BIが決めた経路に分類されなかったら、Slackで「これ計測漏れてます」って自動でアラートがくるように連携されています。
―本当は言ってからやらないといけない感じなんでしょうか?
鉄本: そこもボトルネックにしたくなかったので、アラートは鳴らすけど「ここをぽちぽちしてくれたらデータベースに登録できるから」とシステムを用意して、やってもらっているという感じです。
―アラートで拾えるようになってるんですね。
鉄本: そうですね。可能な限り依頼しなくてもいいようにしています。
―ちなみに代理店の方から指標の提案があるとのことですが、KPIの設計は一緒にするイメージでしょうか。
和田: そうですね、最終的には売り上げにつながるところなので、ファイナンスも含めて、相談しての最終決定にはなります。
―ポリシーみたいなものはあるんですか?
鉄本: 早くなる指標というか、早く判断できるものにどんどんアップデートしていきたいっていうのはありますね。なので、24時間待たないと広告が良かったかどうかわからないのは困ります。それなら精度がちょっとぶれてても、配信し始めて数時間である程度結果がわかる方がいいという考え方を共有したりしています。
何も知らなかったら精度の方を重視しちゃうと思うんですが、早さを大事としたときに今のデータの同期ってリアルタイム性がちょっと弱いなって思ったんです。じゃあ、同期できる方の優先度をあげて実装しようみたいに、BIが持ってるタスクの優先度を入れ替えて対応するといった流れですね。
―マーケのことを知らないとなかなか同じ目線で、いい指標づくりはできないと思うのですが、目線合わせをするために何かされたことってあったりしますか?
鉄本:初めから、関わることですね。
和田:施策の要件定義のところからBIと一緒にやる。結局マーケチームが把握しているところだけで要件定義すると、「こっちの方がいいんじゃない?」みたいな手がなくなっちゃう。
―なんでこのデータ取らずに施策を走らせちゃったんですかって。
和田:そうですね。
鉄本:結構運用が多くなるじゃないですか、マーケって。となると最初から入ってたら運用を多少巻き取れるんですけれど、途中からは多分運用入りたくないじゃないですか。だから新しいツールの導入とかも、最初から話をしていればキャッチアップコストが少なく済むし。自分達が導入したものだから責任持って運用しようってなるんですよ。逆にそれで、うちが運用つらいっていうこともありましたけど(笑)
―施策のはじめから入るってことですね。
鉄本:そうですね。あとは経営層に向けてのレポーティングの場があって、週1回のその場で情報共有をしています。
泥臭く、専門性を持ってスピーディに動ける人と働きたい
―それぞれのチームは、人を増やしていく方向性なのでしょうか。
和田: もちろんです!コンテンツマーケでいうところのSEOだったり、ソーシャルメディアの部分はまだまだ弱いのでもっと強化していきたいなと思っています。
―どういった人と働きたいですか?
和田: とにかく泥臭くやれる人がいいですね。マーケって華やかなイメージを持たれたりするんです。「Pairs」が順調に成長しているといった面もありますし。でもひとつひとつの施策って結構チリツモなところがあって、着実に積み上げていくしかないんです。そこを地道にできる人っていう感じでしょうか。
少数精鋭という会社のポリシーもあって、今マーケティングチームは社員2人でやっているんです。今は撮影準備とかディレクション、衣装選定、モデルアサインにロケハンもマーケチームが行っているんです。
―スタートアップでの働き方を知ってる人の方がいいかもしれないですね。
和田: そうですね。ガツガツいろんなことを、スピードをもって実行できる方がいいかなと。
―BIチームではどういう方を必要としているのでしょうか?
鉄本: BIチームの仕事って、すごく幅広いんですよ。マーケチームとの連携は本当に一部で、全体の2割ぐらいです。他にもファイナンスチームやプロダクトチームなどと連携しています。
そのため、結果的にみんなのスキルが標準化しつつあります。うまく回せる人たちみたいになってきてるところもあって、ここから先に進むには専門性を深堀りしていかないといけないなと思っています。
とはいえ、ひとつの専門分野にしか集中できませんとなると、BIチームの特性上、問題があります。やっぱりいろんなチームと関わって、多くの情報を持っているからこそうまく立ち回れるっていうのもあるので。一貫して立ち回ることができつつ、専門性があるチームになるっていう次のステップに進みたいんですよね。
なのでちょっと欲張りなんですけど、統計知識や機械学習などアカデミックなバックグラウンドがある方だとありがたいです。その上で、ビジネスインパクトとか、何が使えるか、はたまた使わないべきか、まで考えられることが求められます。
―スキル以外で、社風に合うのはどんな人でしょうか?
鉄本: 年齢問わず、成長欲求が高い方だったり、人とのコミュニケーションを怠慢しない人でしょうか。エウレカが求める3つのマインド「責任感」「向上心」「仲間への愛情」もマストです。
和田: 厳しく見えるかもしれないですが、このあたりを徹底しているからこそ、チームの連携がスムーズにいってるのかなと思います。
―なるほど、本日はありがとうございました!